オウンドメディアの名前の決め方|社内・クライアントを納得させる3ステップと事例集

オウンドメディアの立ち上げにおいて、最初にぶつかる壁が『名前決め』です。社内で納得されるか、ユーザーに覚えてもらえるか、SEOにも強いかなど、複数の条件を同時に満たす必要があるため、ネーミングに迷う担当者は少なくありません。
「センスが問われそうで怖い」「決めたあとに後悔しそう」といった心理的な不安も、判断を鈍らせる一因になります。特に、自社初のメディア構築を任されたWeb担当者にとっては、命名の正解が見えず、手が止まってしまうケースもあります。
そこで本記事では、そうした悩みを解消するために『構造的な思考』と『比較できる評価軸』を用いたネーミング設計の手順を紹介します。センスに頼らず、社内外から納得される『強い名前』を決めるための具体的な方法を、事例やチェックリスト付きで解説します。
- オウンドメディアの“良い名前”を決めるための3つの評価軸がわかる
- センス不要で誰でも実践できるネーミング案の出し方と比較フレームがわかる
- 商標・ドメイン・SNSアカウントの事前チェック方法と注意点がわかる
- 成功メディアのネーミング事例から学ぶ、刺さる名前の共通点と構造がわかる

株式会社X-knockは、渋谷にオフィスを構えるWebマーケティングにおけるドクターです。
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大学卒業後、Webマーケティング会社を設立。金融メディアを運営。その後、SNSマーケティングの会社に参画し、Web・オウンドメディアの立ち上げ、クリエイティブディレクターとして企画戦略、撮影編集の統括。SNSマーケティング会社の取締役を経て、2021年に株式会社X-knockの代表として総合Webマーケティング会社を起業。数多くのクライアントのマーケティング支援を行う。
なぜ“名前決め”で止まるのか?よくある3つの迷いと不安
オウンドメディアのネーミングは、多くの担当者にとって『最初の難関』です。「何が正解なのか分からない」「センスが問われそうで怖い」「ダサいと思われたくない」といった心理的な不安から、決断が先延ばしになるケースが少なくありません。
しかし、これらの不安は『センス』の問題ではなく『設計の問題』です。ここでは、ネーミングに迷いやすい3つの典型パターンを整理し、それぞれに対応する構造的な思考の切り口を解説します。
1. 「正解が分からない」という停滞
世の中には魅力的なメディア名が無数に存在します。その中で「自社にとって何が正解なのか」が分からず、手が止まってしまう担当者は少なくありません。
特に初めてネーミングに取り組む場合「正解を探そう」とするほど迷いが深まります。重要なのは、唯一の正解を探すのではなく『自社にとって納得感のある名前』を選ぶ思考設計です。
そのためには、メディアの目的・コンセプト・ターゲットといった情報を言語化し、それに基づいて比較検討できる評価軸を持つことが不可欠です。正解のない問いに向き合うには、判断のフレームワークこそが最大の支えになります。
2. 「センスが問われる」ことへのプレッシャー
ネーミングには『言葉のセンス』が必要とされるイメージがあります。そのため、社内でも「ネーミングはセンスのある人に任せよう」と属人化しやすく、関係者全体で合意を取りづらくなります。
しかし、ネーミングに必要なのはセンスではなく『設計根拠』です。ブランドの理念やユーザー像に紐づいた『意味』を言語化し、なぜこの名前が適切なのかを構造的に共有することで、関係者の納得を得やすくなります。
属人的な直感ではなく、論理的に構築されたプロセスで名前を導き出せば「センスがないから決められない」といった迷いを払拭することができます。
3. 「ダサいと思われたくない」恐れが判断を鈍らせる
一度世に出したメディア名は、後から変更しづらいものです。そのため「万一ダサいと思われたらどうしよう」「センスが悪いと批判されそう」といった恐れから、名前の決定に踏み出せない担当者も多くいます。
この心理的プレッシャーを乗り越えるには『批評される名前』ではなく『共有できる名前』を目指す視点が重要です。
名前そのものの善し悪しを評価するのではなく「どういう背景や意図があって選ばれたか」を言語化・共有することで、名前に対する納得感や支持が広がります。構造的な共有は、迷いを判断に変える後押しとなります。
オウンドメディアの目的・コンセプトをどう名前に落とし込むか?
メディアの名前は、単なるラベルではありません。企業の思想や提供価値を一言で伝える『翻訳』の役割を果たします。コンセプトやターゲットが決まりつつある中で、どのようにそれを言葉へ落とし込むかが、ネーミング成功の分かれ道です。
ここでは、次の3つの視点から、ネーミングに“意味”を宿す方法を解説します。
1. ブランドの理念・ミッションを“言葉”にする
企業が大切にする理念や、提供する価値を一言に凝縮することで、ネーミングに明確な『軸』が生まれます。特にミッションが抽象的な場合は、直接的な言葉ではなく「象徴的な表現」へと言語変換する視点が必要です。
たとえば「生活をより豊かに」という理念なら『日々』や『くらし』といった言葉に展開することで、ブランドの方向性がにじむ名称になります。
理念をもとにネーミングすることで、表層的な言葉選びではなく、ブランドの世界観と一貫した印象を持たせることが可能です。
2. ターゲットユーザーの“感覚”に合わせる
メディアは「誰に読んでもらうか」が最重要です。そのため、ネーミングでもターゲットの『言語感覚』に寄せる視点が欠かせません。
BtoBビジネス向けなら信頼感のある硬めの日本語、若年層向けなら柔らかくキャッチーな造語や英語が効果的です。業界特有の表現や、使い慣れたキーワードを取り入れることで、親近感が高まりやすくなります。
ターゲットがどんな言葉に安心し、どんな響きに反応するのかを把握することは、メディアのブランディングにも直結します。
3. 社内外で“共有できる意味”を込める
名前は見た目の響きだけでなく「なぜこの名前なのか」を誰もが説明できるかどうかが重要です。プロジェクトチームや経営陣、外部パートナーが納得できる『共通言語』としての役割も担います。
たとえば『つなぐ』『育てる』『ひらく』などの意味を含んだネーミングなどです。これらは、関係者間で方向性を確認しやすく、今後の展開にもブレが出にくくなります。
社内プレゼンや稟議でも『言葉の背景』が語れる名前は、浸透しやすく、組織として育てていける資産になります。
「良い名前」の基準とは?3軸でのネーミング評価フレーム
「良い名前」とは何か、それは感覚ではなく、明確な評価軸をもとに判断するべきです。ネーミングを属人的にせず、誰でも論理的に評価・比較できるようにするには『3つの軸』を設定することが有効です。
ここでは、ネーミングを決めるうえで活用できる次の3視点を紹介します。
1. ブランド整合性|理念・サービスと一貫しているか
ネーミングは、企業やサービスの理念と矛盾がないことが第一条件です。たとえば『支援』や『安心』を掲げる企業が、刺激的・尖った印象の名称を採用すると、違和感が生まれやすくなります。
逆に、社名やプロダクトの世界観を踏襲したネーミングであれば、ロゴ・コピー・ビジュアル全体と調和し、ブランドの認知にも一貫性が出てきます。具体的には、タグラインや企業スローガンとの共通要素を入れると、一体感が伝わりやすくなるでしょう。
単体の言葉として良い名前でも、ブランド全体とズレていれば意味が薄れるため『ネーミング=翻訳』の視点を忘れず設計することが重要です。
2. ユーザー視点|刺さる・覚えやすい・言いやすいか
名前は、実際に使うユーザーに届かなければ意味がありません。覚えやすく、言いやすく、誰かに紹介したくなるネーミングが理想です。
たとえば、4〜6文字以内のひらがなや造語は、語感がよく記憶に残りやすい傾向にあります。また、複雑な漢字やカタカナは検索時の誤入力や誤変換が起きやすく、機会損失につながる可能性もあります。
実際の会話やSNS上で名前が使われる場面を想定し、声に出して確認する『音読テスト』も効果的です。語感・印象・検索性の3点を揃えることで、ユーザーとの距離が一気に縮まります。
3. SEO性|検索性・キーワードとの親和性があるか
SEOの観点からは、ターゲットとする検索キーワードとネーミングの親和性を確認することが不可欠です。たとえば『マーケティング支援』なら『マーケ』や『集客』などの言葉を含めると、指名検索されやすくなります。
ただし、キーワードを入れすぎると不自然になり、ブランド性が損なわれるリスクもあります。競合メディアや商標との重複、検索ボリュームの多寡も合わせて調査しましょう。
さらに、Google検索結果で上位に表示される名称がすでに存在する場合は、別案を検討する必要があります。検索に強い構造と指名検索されやすい名前、この両立こそがSEO型ネーミングの鍵となります。
ネーミング案の出し方と選び方|候補比較の進め方
ネーミングを決めるには、いきなり「この名前がいい」と断定するのではなく『出す→比較する→共有する』という段階を踏むことが重要です。
思いつきやセンスだけに頼らず、誰でも一定の手順で質の高い案を出し、社内外の関係者に納得される形で決定できるプロセスがあれば、ネーミングの属人性は大きく減らせます。ここでは、以下の3ステップを軸にしたネーミング決定プロセスを紹介します。
1. 候補を出す|型と発想法で広げる
ネーミング案を考える際、いきなり自由な発想で言葉を探すのは非効率です。そこで役立つのが『型』を活用した発想法です。
たとえば『理念型』『動詞型』『造語型』『比喩型』など、40種類以上のパターンに沿って出すことで、誰でも一定のクオリティで案を量産できます。
『暮らし×サポート』で『クラポ』などの造語にする発想や、感情を引き出す動詞を軸にしたネーミングも有効です。まずは各型の例を参考にしながら、意味・語感・印象が異なる複数案を用意し、視野を広げましょう。
発散のフェーズでは数を出すことを重視します。
2. 比較する|3軸評価で客観的に選ぶ
複数のネーミング候補が出揃ったら、次は客観的に比較・評価するステップです。ここで重要なのが『ブランド整合性』『ユーザー視点』『SEO』の3軸でのフレーム評価です。
各案に対して5段階で点数をつけて合計し、見える化することで「なんとなく」ではなく『この案が通る理由』を明確にできます。この評価プロセスを社内で共有すれば、好みの違いによる衝突も防ぎやすくなります。
「名前はセンスではなく構造で決める」ことを実感できるのが、この比較フェーズです。理性と直感の両面で納得できる案を絞り込んでいきましょう。
3. 社内に共有する|選定理由を“見える化”する
候補の中から最終案を決定したあとは「なぜその名前になったのか」を社内外に共有することが大切です。その際に有効なのが、決定理由を一言コメントや資料にして『見える化』する方法です。
ネーミングに込めた意味、評価のプロセス、候補比較の結果などを丁寧に伝えることで、関係者の共感と納得を得やすくなります。さらに、名前への理解が深まることで、メディア自体への愛着や発信力も高まりやすくなります。
単なる『決定報告』ではなく『共感形成のプレゼン』として進めることが、ブランド浸透の第一歩です。
SEOに強い名前とは?キーワード設計とドメイン取得の注意点
オウンドメディアの集客において「検索で見つけてもらえる名前かどうか」は成果を大きく左右します。ただし、SEOに強い名前を目指す際には、指名検索とのバランスやブランド性との整合性を考慮する必要があります。
ここからは、キーワードの入れ方や言語選定の基準、ネーミング決定前に必ず行うべきチェック項目など、SEOとブランド戦略を両立するための実務的ポイントを3つの注意点として整理しました。
注意点1:キーワードを入れるか否かは“目的次第”
SEOを意識したネーミングでは、検索されやすいキーワードを含めることが有効です。たとえば『マーケティング』『採用支援』などの言葉を盛り込めば、検索結果に表示される確率が高まります。
しかし、キーワードを優先しすぎると、ブランド名としての一貫性や独自性が薄れる恐れもあります。キーワード重視でいくのか、ブランド構築を優先するのか。
これは『サイト全体の目的』によって判断すべきです。メイン名とサブタイトルで役割を分けるなど、柔軟な設計でSEO性とブランド性の両立を目指しましょう。
注意点2:英語 or 日本語 or 造語、選び方の基準
名前に使用する言語には、それぞれ特性があります。英語は、スタイリッシュでグローバル感があり、ビジネス系メディアとの相性が良い傾向にあります。
一方、日本語は親しみやすさや安心感があり、生活系メディアに適していることが特徴的です。造語は唯一性が高く、ブランディングには強力ですが、SEOには工夫が必要です。
検索にヒットしづらい分、指名検索されやすい名前設計が求められます。また、言語によってSNSでの拡散力や記憶性も変わるため、ターゲット層やメディアの世界観に合わせて選定しましょう。
印象だけで決めず、戦略的に言語を設計することが大切です。
注意点3:ドメイン・SNS・商標のチェックを忘れずに
名前が決まったあとに「ドメインが取れない」「商標が被っている」「SNSで使えない」と気づくのは、運用面で大きな支障になります。ネーミングを決定する前に、必ず同時にこれらの使用可否を調査する必要があります。
ドメインは『.com』『.jp』など希望拡張子の空き状況を確認し、商標はJ-PlatPatなどで同業他社の登録をチェックしましょう。SNSでは、主要プラットフォームでのアカウント名取得が可能かも確認することが重要です。
使えない名前は、いかに魅力的でも意味を成しません。ブランド保護と実務面を両立させるための最重要チェックポイントです。
商標・ドメイン・SNSアカウント確認のチェックリスト
ネーミングの完成度が高くても、実際に使えなければ意味がありません。特に多いのが、「商標登録が被っていた」「ドメインが取れなかった」「SNSアカウントがすでに使われていた」というケースです。
こうした『詰みポイント』を回避するには、ネーミング決定前に事前調査を行い、使用可否をチェックしておくことが不可欠です。ここでは、商標・ドメイン・SNSの確認をスムーズに進めるための3つのチェック項目を紹介します。
チェック1:商標登録の有無を確認する
ネーミングが他社により商標登録されていないかは、必ず確認すべき最優先事項です。特に同業・類似業界での商標被りは、法的リスクに直結します。
調査には、特許情報プラットフォーム『J-PlatPat』を活用します。検索キーワードには候補名だけでなく、似た語感の名称も含めて調査すると安心です。
商標は登録されているだけで『即NG』とされるケースも多く、ビジネス展開や提携にも影響を与える可能性があります。思いつきで名前を決定せず、商談前・公開前の早い段階で必ずチェックを済ませましょう。
チェック2:ドメインの空き状況を確認する
オウンドメディアの名前とドメインが一致していることは、信頼性・ブランド認知・SEO対策のすべてにおいてプラスになります。候補名が決まった時点で『.com』『.jp』『.co.jp』などの主要ドメインの空き状況を必ず確認しましょう。
確認には『お名前.com』や『Google Domains』などの検索サービスが便利です。なお「日本語ドメイン」は覚えやすさでは有利ですが、入力ミスや環境依存文字の問題もあるため注意が必要です。
せっかくの名称でも希望ドメインが取れなければ、ユーザーがたどり着けない・信頼されないというリスクが生まれます。
チェック3:主要SNSアカウント名の使用可否を調べる
SNSはメディアの情報発信・拡散・ブランディングに欠かせないチャネルです。そのため、ネーミング候補に対して、主要SNSアカウントが確保できるかの確認は必須です。
X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、YouTube、TikTokなど、使う可能性のある媒体はすべて確認しておきましょう。アカウント名が取得できない場合、ブランドの統一感が損なわれたり、第三者に先取りされるリスクがあります。
可能であれば、名前の最終決定前に仮登録や予約を行い、早期に名称の使用権を押さえるのが理想です。アカウント名の空き状況は、ブランド保護の観点からも極めて重要です。
他社はどうしてる?ネーミング事例と“理由”を分解解説
成功しているオウンドメディアは、例外なく『名前の設計意図』が明確です。ただ響きが良いだけではなく、コンセプト・ユーザー心理・拡散性などを考慮したネーミングがされており、事業目的との整合性も取れています。
ここでは、実在する成功事例をもとに「なぜその名前が刺さったのか」を2つの事例から分解・解説します。
コンセプトを言語化したネーミング事例|キリンビール大学

『キリンビール大学』は、ビールの楽しみ方や知識を体系的に学べるコンテンツメディアです。『大学』という言葉をあえて使うことで、専門性と信頼感を担保しながらも、堅苦しさのない親しみを持たせています。
このネーミングは、キリンの企業理念である「お客様とともに、より豊かなビール文化を育てる」というコンセプトをそのまま言語化した例といえます。
誰に、どんな価値を、どう伝えるかを踏まえたうえで、シンプルな単語に落とし込んだ設計が秀逸です。名前を見ただけで『何のためのメディアか』が伝わる、構造的に成功した好事例といえるでしょう。
語感と記憶性を重視したネーミング事例|クラシル

『クラシル』は、料理レシピ動画サービスとして人気を博したオウンドメディアです。この名前は『暮らし』と『シンプル』を掛け合わせた造語で、柔らかく親しみやすい語感が特徴です。
造語でありながら意味が連想しやすく、短く、発音もしやすいことから、ユーザーの記憶に強く残ります。特に、家事・料理など日常に密着したコンテンツでは、感覚的に『覚えやすい名前』がサービス継続率にも影響します。
さらに、ドメイン・SNSともに早期確保されており、ブランド統一が徹底されている点も成功要因のひとつです。音の心地よさと、意味の伝わりやすさの両立を実現した好例です。
まとめ|センスに頼らず、納得できる名前を作るには
オウンドメディアのネーミングは「思いつき」や「語感の良さ」だけで決めるものではありません。ブランドの理念やターゲット、SEOの観点など、複数の要素を言語化・構造化し、比較と検証を経て決定するべき重要なプロセスです。
本記事では、ネーミングに迷いがちな担当者に向けて、具体的な出し方や比較の仕方、社内外での共有方法までを段階的に紹介しました。今後、名前を決める場面に直面しても「センスがないから無理」と悩む必要はありません。
設計フレームと評価軸を用いれば、誰でも納得感のある名前を導き出せます。まずは手を動かし、候補を出して比較してみることが第一歩です。
戦略に沿った強い名前を、プロセスで導いていきましょう。