なぜ今、大企業がオウンドメディアに本気なのか?成功パターンから見る活用戦略

大企業が本格的にオウンドメディアへ取り組む動きが加速しています。広告やプレスリリースだけでは伝えきれない企業の姿勢や文化を届ける手段として、オウンドメディアの戦略的活用が注目されています。
特に採用広報や営業支援、ブランディングなど目的に応じた中長期の情報資産化が評価されており、単発のPRにとどまらない持続的成果を生み出しています。
本記事では、広報・採用・営業・ブランド構築それぞれの成功パターンを具体事例とともに紹介。さらに、成功企業に共通する体制や設計思想、大企業特有の課題とその解決策までを網羅し、自社に合った活用戦略を描くための視点を提供します。
- 大企業は広報・採用・営業支援・ブランド構築の4つの目的でオウンドメディアを活用している
- 成功には複数部署の横断体制と継続可能なワークフロー設計が重要
- 属人化防止・更新停止対策・部署間の意思統一が運用課題の解決策
- 社内提案時は目的・予算・体制を明示した資料で稟議を通す必要がある

株式会社X-knockは、渋谷にオフィスを構えるWebマーケティングにおけるドクターです。
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大学卒業後、Webマーケティング会社を設立。金融メディアを運営。その後、SNSマーケティングの会社に参画し、Web・オウンドメディアの立ち上げ、クリエイティブディレクターとして企画戦略、撮影編集の統括。SNSマーケティング会社の取締役を経て、2021年に株式会社X-knockの代表として総合Webマーケティング会社を起業。数多くのクライアントのマーケティング支援を行う。
なぜ大企業がオウンドメディアに本気なのか
短期的な広告施策では築けない「中長期的な資産」として、オウンドメディアの価値が再評価されています。
- 広報では、企業姿勢を深く伝える手段として
- 採用では、企業文化や働き方を伝える場として
- 営業支援では、ナーチャリングやリード獲得の基盤として
大企業ほど関係者が多く、従来のマスメディア的アプローチでは届きにくい課題がありました。その中で、ターゲットに最適化した独自発信を自社メディアで展開できるオウンドメディアが、戦略の中心へと躍り出ているのです。
大企業オウンドメディアの成功共通点
成功している大企業のオウンドメディアには、いくつかの共通する設計思想が見られます。目的設定が明確で、広報・採用・営業など複数部署を巻き込んだ体制が構築されており、属人化を避けた運用フローと継続可能なKPI設計が行われています。コンテンツは企業視点ではなくユーザー視点に立脚しており、中長期で信頼と成果を積み上げる構造になっています。これらは偶然の成果ではなく、戦略的な設計と体制構築に基づいた“再現可能な成功パターン”である点が特徴です。
成功事例に共通する体制や運用のポイントについて、以下の2つの側面から詳しく解説します。
共通の体制・チーム構成
広報、マーケティング、採用、人事、営業など、複数部門の連携を前提とした体制が不可欠です。単独部門に運用を任せると、目的が限定されたり継続性に課題が生じることがあります。
成功している企業では、経営層の承認を得た上で「横断的な編集委員会」や「全社巻き込み型のワーキンググループ」が設置されており、それぞれの部署の目的やKPIを反映したコンテンツ設計が行われています。
体制自体がメディアの品質を支えるインフラとなっています。
継続更新を支えるワークフローとKPI
属人化や一過性の運用を防ぐため、継続的なワークフローと目的別KPIの設計が成功の鍵となります。たとえば「週1本更新」「月1回のテーマ会議」など、定例化された制作体制を整えることで安定運用が可能になります。
評価指標としては、PVや滞在時間だけでなく、採用応募数、営業リード件数、問い合わせ件数など目的に応じたKPIを設定。数値の定点観測を通じて改善サイクルを回し、社内への説得材料としても活用されています。
目的別|オウンドメディア成功事例集
オウンドメディアは目的によって設計方針もコンテンツも大きく異なります。採用に特化したメディアと、営業支援を目的とするメディアでは、伝えるべき情報も評価指標もまったく異なるからです。成功している大企業は、目的を明確にしたうえで、ターゲットに最適化されたコンテンツと運用体制を整えています。
目的ごとの成功パターンを把握することで、自社に必要なモデルを見つける手がかりとなります。
以下では、4つの主要目的別に成功事例を紹介します。
採用:メルカリ、サイボウズ式など
メルカリの「mercan(メルカン)」は、現場社員の声や開発文化を継続的に発信し、企業理解と共感を高めるメディアです。SNSと連携した拡散設計により、採用母集団の質・量ともに向上しています。
サイボウズ式では「働き方」や「チームの在り方」をテーマにした記事を通じて、企業文化を社外に浸透させ、志望者とのマッチング向上に成功。単なる求人情報の補足にとどまらない、企業らしさを伝える戦略が共通点です。
広報:DSPACE(三菱電機)など
三菱電機が運営する「DSPACE」は、広告色を排した読み物系のメディアです。研究者や技術者の姿を丁寧に伝えることで、企業姿勢や技術力を深く理解してもらう構成となっています。
商品やサービスを直接売り込まず、企業ブランド全体の信頼性を高めることに注力しており、読者からの信頼を積み上げています。既存の広報に加え、企業の“姿勢”を表現する新たなチャネルとして機能しています。
営業支援:マネーフォワードBizpediaなど
マネーフォワードが展開する「Bizpedia」は、経理・財務・バックオフィス担当者向けに業務課題の解決策を発信。FAQやホワイトペーパーなど実務寄りの情報が豊富です。
SEO設計された記事群は検索流入を獲得し、ホワイトペーパーDLなどを通じてリード獲得に直結。月間数千件の問い合わせや資料請求を生み出す営業支援メディアとして成果を挙げています。
読者が「業務上の課題解決」を求めて能動的に接触してくる点も特徴です。
ブランド構築:となりのカインズさんなど
「となりのカインズさん」は、ホームセンターであるカインズが運営するライフスタイル系メディアです。商品訴求を前面に出さず、暮らしの中の小さな工夫やアイデアを届ける構成が好評です。
読者との日常的な接点を通じて、親しみと共感を育て、結果的にブランドへの愛着を醸成しています。売上直結ではなく、中長期的なブランド構築を目的とした運用方針が、多くのファンを獲得する要因となっています。
大企業オウンドメディア運用の課題と解決策
大企業におけるオウンドメディア運用では、組織構造や人材流動性の特性から特有の課題が発生します。複数部署の思惑が交錯することで目的が曖昧になりやすく、運用が属人化したり、更新が途絶えてしまうケースも少なくありません。
こうしたリスクを未然に防ぎ、成果につなげるには、初期段階での設計と体制づくりが重要です。ここでは、運用課題を克服している企業の実践例をもとに、主な対策を3つの視点から紹介します。
部署横断の意思統一法
広報、IR、人事、DXなど、目的の異なる部署を巻き込むには「合意形成の仕組み化」が欠かせません。初期段階で共通KPIを設定し、各部門の役割とゴールを明文化することで、横断的な意思統一が可能になります。
たとえばキックオフミーティングや合宿型ワークショップで目的と期待成果を共有し、編集委員会などの定例会議体を設けることが効果的です。
全社的に理解を得ることで、継続性あるメディア運営が実現します。
属人化を防ぐ体制構築
属人化は、担当者の異動や退職によって運用が停滞する大きな要因です。成功している企業では、制作フローやチェック体制をドキュメント化し、誰が担当しても機能する仕組みを整えています。
具体的には、記事制作マニュアルやKPI進捗表の共有、CMSの操作手順書の整備が挙げられます。また、複数名で編集責任を分担するなど「チーム型運用」にすることで、リスク分散とナレッジの蓄積を両立させています。
更新が止まるリスクと予防策
更新停止は、メディア価値の低下に直結します。更新が止まる要因の多くは、ネタ不足や担当者の時間不足、社内巻き込みの失敗です。
これを防ぐには、コンテンツ企画会議の定例化や年間計画の策定が有効です。月単位でテーマを決め、取材対象や公開スケジュールを事前に組むことで、計画的に運用できます。
また、KPI進捗を定期報告する仕組みをつくると、社内の緊張感が維持され、メディアの継続力が高まります。
まず何から始めるべきか?導入〜社内提案フロー
オウンドメディア導入の初期フェーズでは、「目的の明確化」と「社内合意の形成」が不可欠です。稟議を通すには、経営層の納得を得る情報設計と、関係部門を巻き込む仕組みが必要になります。
成功している企業は、提案フェーズから戦略設計を始めており、導入目的・予算・体制の三点を明示した資料を活用しています。
ここでは、導入初期に必要な設計ポイントを以下の2つの観点から整理します。
- 社内提案時に使える構成要素
- 予算・体制を確保するための稟議ポイント
社内提案時に使える構成要素
社内提案の成否は、提案資料の構成にかかっています。経営層や決裁者は「目的の妥当性」「数値的な根拠」「リスクへの備え」を重視するため、これらを端的に盛り込むことが重要です。
たとえば、導入目的を採用強化・営業支援などに明示し、想定CV数や運用KPIを数値で提示します。あわせて、更新停止リスクや属人化対策など課題への対応策を記載すると、判断材料として十分な説得力を持たせることができます。
予算・体制を確保するための稟議ポイント
稟議の通過には「実現可能な体制設計」と「効果に対する妥当な投資額」が必要です。成功企業では、人員・業務分担・外注活用などの具体プランを稟議段階から提示しています。
たとえば、編集担当2名+外部ライター体制で月4本更新といった具体案や、必要予算を内製・外注で分けて試算する方法が有効です。
CMSや制作ツールの選定も早期に進めておくことで、導入後のスムーズな立ち上げにつながります。
まとめ|オウンドメディアを“資産”に変える大企業の戦略
オウンドメディアを単なる広報手段にとどめず、“企業の資産”として活用するには、中長期的な視点と再現性ある体制設計が欠かせません。目的ごとに適切なコンテンツとKPIを設け、継続運用できる仕組みを初期段階から構築することが重要です。
また、全社を巻き込む連携体制や説得力のある提案フローも、成功の鍵となります。
今回紹介した成功事例や共通要素を、自社の課題と照らし合わせて整理することで、社内合意から実行フェーズへの移行がスムーズに進むはずです。
オウンドメディアを企業価値向上の基盤として機能させるために、第一歩を確実に踏み出しましょう。