【2025年対応版】オウンドメディアと電気通信事業法|対象範囲・届出義務・対応策を解説

2023年に改正された電気通信事業法は、従来の通信事業者だけでなく、オウンドメディア運営者にも影響を与える内容へと変わりました。
広告掲載や問い合わせフォームの設置、ユーザー情報の取得などを行っているWebメディアは、一定条件のもとで『電気通信役務提供者』として法の対象となる可能性があります。
しかし「自社は届出が必要か」「何を表示しなければならないのか」など、判断に迷う場面も少なくありません。
そこで本記事では、電気通信事業法の基本から、オウンドメディアが対象となる条件、表示義務や届出内容、違反時のリスク、他法令との違い、企業の対応事例までを網羅的に解説します。法務部のない環境でも、実務対応の指針として活用できる内容です。
- 電気通信事業法の基本と2023年改正の背景がわかる
- オウンドメディアが対象となる条件と具体的な該当例がわかる
- 表示義務・届出義務の内容と、違反時に生じるリスクがわかる
- 社内での対応フローと、弁護士相談に向けた準備ポイントがわかる

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大学卒業後、Webマーケティング会社を設立。金融メディアを運営。その後、SNSマーケティングの会社に参画し、Web・オウンドメディアの立ち上げ、クリエイティブディレクターとして企画戦略、撮影編集の統括。SNSマーケティング会社の取締役を経て、2021年に株式会社X-knockの代表として総合Webマーケティング会社を起業。数多くのクライアントのマーケティング支援を行う。
電気通信事業法とは?
電気通信事業法は、電話やインターネットなどの通信サービスを提供する事業者を対象に、利用者の利益保護や通信の円滑な提供を目的として制定された法律です。1984年の施行以来、主に通信インフラを提供する企業に適用されてきました。
しかし、近年はWebメディアでも、広告配信や個人情報の収集、双方向の通信機能を有するものが増加。こうした背景を受け、2023年の法改正では、通信機能を有するWebサイトも一定の条件下で『電気通信事業者』としての位置付けが明確化されました。
これにより、従来は対象外とされていた企業メディアやオウンドメディアも、法的義務の対象となる可能性があります。今後は、運用形態に応じて正しく判断し、必要な対応を講じることが求められます。
オウンドメディアが対象になるのはどんな場合?
電気通信事業法の改正により、特定の機能を有するオウンドメディアは『電気通信役務提供者』として届出や表示義務の対象となる可能性があります。次のような運用を行っている場合、該当する可能性が高まります。
状況 | 詳細 |
---|---|
広告を掲載している場合 | 広告配信プラットフォームを通じて収益を得ているメディアは、通信機能を利用して情報をやり取りしていると見なされます。 |
問い合わせフォームを設置している場合 | ユーザーが自ら情報を送信するフォームを介することで、双方向通信が成立するため対象となる可能性があります。 |
アクセス解析ツールを用いてユーザー行動データを取得している場合 | CookieやIPアドレスなどを取得していると、個人識別性のある情報の送受信と判断されます。 |
自社がどの運用形態に該当するかを確認し、法の対象となるかを見極めることが重要です。
表示義務・届出義務があるケースとその内容
電気通信事業法により『電気通信役務提供者』として該当するオウンドメディアは、次の情報を明確に表示することが求められます。
- 事業者の氏名または名称・連絡先
- サービスの利用目的・提供内容
- 問い合わせ窓口の設置
- 通信の取り扱いに関する方針(外部送信規律など)
加えて、広告やフォーム機能などによって『通信』を介したサービス提供と判断される場合には、総務省への届出が必要です。届出は『電気通信事業届出書』に所定事項を記載し、郵送または電子申請により提出します。
総務省はガイドライン内で、判断基準や表示例を示しており、Web担当者やマーケティング部門が実務に落とし込むための参考になります。対象となるか不明な場合は、ガイドラインに沿った自己チェックと専門家への相談が推奨されます。
非対応だとどうなる?違反事例とリスク
電気通信事業法の表示義務や届出義務に違反した場合、企業は複数のリスクに直面します。最も多いのが総務省による行政指導です。
これは公開形式で実施されることがあり、企業名や違反内容が社会的に周知されるケースもあります。また、広告配信の停止やパートナー企業からの契約解除が発生することもあり、収益構造に直接影響を及ぼします。
特にメディア運営を事業の一部としている企業では、アクセス減少や掲載拒否に発展する例も報告されているため注意が必要です。さらに、ユーザーや取引先からの信頼が損なわれ、企業ブランドの毀損につながる恐れもあります。
実際、過去にはフォーム運用に関する届出漏れが指摘され、対応不備が報道された事例も存在します。こうした影響を未然に防ぐためには、日頃からのチェック体制が不可欠です。
他法令との関係も整理しよう(特商法・個人情報保護法など)
電気通信事業法のほかにも、オウンドメディア運営に関わる主要な法律として『特定商取引法(特商法)』『個人情報保護法』『景品表示法(景表法)』があります。これらは役割や対象が異なり、併用しての確認が必要です。
法律名 | 電気通信事業法 | 特定商取引法 | 個人情報保護法 | 景品表示法 |
---|---|---|---|---|
主な対象 | 通信機能を持つWebサイト | 通信販売などの取引行為 | 個人情報を取得する事業者 | 表示全般 |
主な規制内容 | 表示義務・届出義務 | 販売者情報の表示義務 | 取得目的の明示・同意取得 | 優良誤認・有利誤認の防止 |
該当するメディアの例 | 広告やフォームがあるオウンドメディア | 商品購入ページのあるEC型メディア | 会員登録フォームやCookie取得あり | 商品紹介やキャンペーン掲載のメディア |
メディアの運用目的や機能に応じて、複数の法律が同時に適用される可能性があるため、それぞれの違いを正しく理解し、運用に反映することが求められます。
実際の企業の対応事例4選
改正した電気通信事業法への対応状況は、メディアの種類や機能によって異なります。ここでは、対応済み企業の表示例や実装方法を紹介します。
次のような企業メディアを参考に、媒体タイプごとの対応傾向を把握しましょう。
Web担当者Forum

Web担当者Forumでは、弁護士監修のもと改正電気通信事業法がオウンドメディアに及ぼす影響をQ&A形式で整理しています。
特に多くのWeb担当者が疑問を持つ「どのような場合に届出が必要か」「広告と情報提供の線引きは?」といった問いに対し、法的根拠を明示しながら簡潔に解説されています。
掲載例では、フッター部分に運営者情報や連絡先を記載し、サービスの目的を明記するなど、表示義務を実践する様子が確認可能です。視覚的にもわかりやすく、社内展開の参考にも適しています。
ASUEブログ

ASUEブログでは、フォームを設置するオウンドメディアが直面する外部送信規律の対応について詳しく解説されています。とくにGoogleアナリティクスなどの外部ツールを用いる場合、ユーザーの同意取得や利用目的の明示が求められる点に焦点を当てています。
実際の対応例として、フォーム設置ページに外部送信情報の有無を明示した注釈や、プライバシーポリシー内に取得情報の用途・送信先を明記した実装が紹介されています。改正法で重視される『透明性』の担保という観点から、必見の事例です。
webtru

webtruでは、自社のオウンドメディアが電気通信事業法の対象となるかを判断するためのフローチャートを図解で紹介しています。具体的には『広告の有無』『フォームの有無』『アクセス解析の実施有無』といった条件をYES/NO形式で辿る構成となっており、実務担当者でも直感的に判断できる設計です。
また、図解にあわせて、該当時の表示義務や届出の必要性も併記されており、社内での説明資料としても有効です。初動判断を誤らないためのツールとして、非常に参考になります。
TMIコンサルティング

TMIコンサルティングでは、法務・ITの双方の観点から、改正法対応に必要な手順をステップごとに解説しています。たとえば、サービス提供範囲の棚卸し、データの取得方法の明確化、届出の準備・提出といったフローを1つずつ丁寧に記載しています。
特に注目すべきは、データ取得状況の把握に関する実務アドバイスです。タグマネジメントツールの活用や、データ送信先の洗い出しなど、現場で直面しやすい課題にも触れています。
社内での確認フローをどう作るか
改正電気通信事業法への対応を実効性あるものにするには、Web担当・マーケティング担当・法務・経営層が一体となって対応フローを整備することが重要です。
まず、Web担当やマーケティング部門では、自社のオウンドメディアが持つ機能を正確に把握する作業から始めます。広告の有無やフォームの設置状況、アクセス解析ツールの使用など、対象となる可能性のある要素を明らかにすることが第一歩です。
その後、法務部門が該当する法令を確認し、表示義務や届出の要否について一次判断を行います。ガイドラインや過去の事例と照らし合わせながら、想定されるリスクも同時に評価します。
最終的には経営層が対応方針を決定し、必要に応じて弁護士相談や外部支援の導入を判断します。部門をまたぐ確認体制の構築が、法令対応の精度を高めるのです。
弁護士相談前に準備しておくべき情報
法的リスクの判断を専門家に委ねる際は、事前に必要な情報を整理しておくことで、相談の精度と効率が大きく向上します。まず求められるのは、サービス全体の概要です。
対象となるメディアが提供するコンテンツの内容や目的、更新頻度、想定するユーザー層など、基本的なプロフィールを明確にしておくことが出発点となります。
次に、フォームの有無や広告掲載状況、アクセス解析ツールの導入有無といった通信・データ取得に関する項目が重要です。特にCookieの利用や、第三者へのデータ送信がある場合は、その範囲や送信先の整理も必要です。
加えて、過去に対応した法務対応履歴や社内ガイドラインがある場合は、それらも併せて提示することで、弁護士側の理解が深まり、適切な助言を得やすくなります。
まとめ
改正電気通信事業法により、オウンドメディアを運用する企業も明確な法的責任を求められる時代となりました。
特に広告やフォーム、アクセス解析ツールを活用しているWebサイトは、対象範囲に該当する可能性が高く、表示義務や届出の必要性を見落とすことは大きなリスクにつながります。
本記事では、法の基本から対象判定の条件、具体的な義務内容、違反時のリスク、他法令との関係、そして企業事例や社内対応フローまでを総合的に解説しました。
重要なのは、特定の担当者だけが理解するのではなく、社内全体で「自社が法の対象かどうか」を共通認識として持つことです。
その上で、必要に応じて社内調整や外部専門家との連携を行うことが、健全で持続的なメディア運営につながります。まずは自社の状況を正確に把握し、対応の第一歩を踏み出しましょう。