属人化しない編集体制の作り方|オウンドメディア運用を仕組み化する方法

オウンドメディアを運用する中で、最も頻繁に立ちはだかる壁が『編集業務の属人化』と『担当者の疲弊』です。とくに編集長不在や兼任体制の現場では、誰が何をするべきかが曖昧なまま、記事制作がなんとなく進んでしまう状況も少なくありません。
結果として、業務の手詰まりや品質のバラつきが慢性化し、改善の糸口が見えないという悩みが多く聞かれます。
本記事では、そうした課題を抜本的に解消するための『編集体制』と『業務フロー』の作り方を解説します。立ち上げ期・拡張期・安定期といったフェーズごとの最小構成テンプレートを提示し、属人性を排除した『仕組みで回る』編集の実現を支援します。
実務で使えるマトリクスやチェックリストも紹介しますので、明日からの現場改善にお役立てください。
- フェーズ別に見る最小で機能する編集体制の組み方がわかる
- 属人化を防ぐための編集業務の分解と可視化方法がわかる
- チェック体制と品質管理ルールの整備手順がわかる
- 社内外メンバーと円滑に連携するための進行設計がわかる

株式会社X-knockは、渋谷にオフィスを構えるWebマーケティングにおけるドクターです。
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大学卒業後、Webマーケティング会社を設立。金融メディアを運営。その後、SNSマーケティングの会社に参画し、Web・オウンドメディアの立ち上げ、クリエイティブディレクターとして企画戦略、撮影編集の統括。SNSマーケティング会社の取締役を経て、2021年に株式会社X-knockの代表として総合Webマーケティング会社を起業。数多くのクライアントのマーケティング支援を行う。
編集業務を“見える化”する3つのステップ
オウンドメディア編集の多くは、実際の業務が担当者ごとの経験値に依存しやすく「誰が何をどう進めているか」が見えにくくなりがちです。この『見えにくさ』こそが、属人化・工数の増大・品質のばらつきを引き起こす主因となっています。
そこで重要になるのが、編集業務の『見える化』です。具体的には、下記の3つのステップが有効です。
- 業務をすべて洗い出す
- 役割を分担する
- 業務フローとして整理する
たとえば『企画/構成/執筆/編集/レビュー/入稿』といったプロセスを棚卸しし、1つひとつの工程を誰が担うのかをマトリクスで整理することで、チームの全体像が明確になります。
こうした共通の業務定義を持つことが、メンバー間での認識を揃える鍵となります。編集業務が『言語化』されることで、属人化から脱却し、再現性ある改善が可能です。
フェーズ別|最小で機能する編集体制テンプレート
オウンドメディアの運用には、立ち上げから安定運用まで、各フェーズに応じた編集体制の最適化が欠かせません。特に限られたリソースで成果を出すには『最小構成でも機能する』体制設計が重要です。
ここでは、3つの成長段階ごとに必要な役割と工数の目安を紹介します。
それぞれの段階で「何を・誰が・どこまで担うか」を定義することで、属人化を防ぎ、再現性ある体制構築が実現できます。
立ち上げ期|兼任で回すミニマム体制
メディアの立ち上げ初期では、十分な人員や予算を確保しづらく、多くの業務を少数で兼任する必要があります。この段階では『マーケティング担当×ディレクター』の兼任者が中心となり、外注ライターを活用した最小構成での運用が現実的です。
重要なのは、たとえ少人数であっても『誰が何を担うか』を明示することです。企画、構成、執筆依頼、公開チェックなど、工程ごとに役割を棚卸しするだけでも、情報の行き違いや品質トラブルを大きく減らせます。
まずは明文化された役割分担を持つことが、安定運用への第一歩です。
拡張期|3役を明確化して分業フェーズへ
運用が軌道に乗ると、記事本数の増加や品質担保の必要性が一気に高まります。このフェーズでは、体制を『編集長/企画担当/進行管理』の3役へと拡張し、分業体制へと移行することが推奨されます。
役割の明確化により『誰が何を・いつまでに行うか』が可視化され、属人化や対応遅延のリスクを回避することが可能です。編集長が品質と方針を統括し、企画担当がテーマ設計、進行管理がスケジュールと納品確認を担う分担設計が基本です。
明確な役割分担こそが、スピードと安定性の両立を支えます。
安定期|専任×外注を組み合わせたスケーラブル体制
体制が成熟し、記事数・成果が安定してくると、編集業務には『質・量・スピード』のすべてが求められるようになります。このフェーズでは、社内の専任体制と信頼できる外注先を組み合わせた『ハイブリッド体制』が最適です。
内製チームが全体設計や品質管理を担い、執筆や初稿編集を外注化することで、PDCAサイクルを高速に回すことが可能になります。編集部がハブとして機能し、情報設計・進行管理・品質チェックを一貫して担う体制こそが、継続的な成長を支える鍵となります。
編集フローを“仕組み化”する5ステップ
編集体制を整えるうえで、もう一つ重要なのが『編集フローの標準化』です。各工程が属人的に処理されていると、品質のバラつきや進行遅延が発生しやすくなります。
ここでは、記事制作の全体像を5ステップに分解し、外注や監修も含めた『再現性ある流れ』を設計する方法を紹介します。
全体像を可視化し、チェックポイントとボトルネックを明確にすることで、チーム全体の生産性と成果が大きく向上します。
ステップ1:企画と構成案の設計
成果につながる記事制作は「なぜ書くのか」という意図の設計から始まります。読者ペルソナ、検索意図、CV導線といった『目的』を明確にした上で企画を立てることで、意図のズレや記事の的外れを防ぐことが可能です。
特にオウンドメディアでは、単なる情報提供ではなく、自社の成果に直結する設計が求められます。『何を書くか』よりも『なぜ書くか』の視点を優先し、構成案では導線設計や見出し構成も含めて整理します。
あらかじめ方向性を共有しておくことで、執筆から公開までの全体フローをスムーズにすることが可能です。目的を起点に構成を設計することで、個人に依存せずに『意図が伝わる記事』が量産できる編集体制が実現します。
ステップ2:ライター執筆と素材準備
ライターへの執筆依頼においては、依頼前の準備が記事の品質と工数に直結します。指定キーワード、構成案、参考資料をセットで用意し、記事の方向性と論点を事前に明確に伝えることで、書き手の迷いや品質差を防げます。
準備が不十分な場合、初稿に大幅な修正が必要となり、結果的に編集者・ライター双方の負担が増加するため注意が必要です。執筆前に必要な素材を整えるフローをテンプレート化しておくことで、外注との連携精度も安定しやすくなります。
ライターは編集意図を正確に反映しやすくなり、編集者も確認ポイントに集中できます。執筆準備の段階で『品質を決める』という認識を共有することが重要です。
ステップ3:編集・レビュー・校正
初稿が納品された後は、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)や事実確認、トンマナの統一など、複数の観点からの編集・レビューが欠かせません。とくに複数人が関わる編集体制では、主観的な評価に偏らない『共通のチェック項目』を設けることが重要です。
内容が正しくても読みづらい記事は読了率や信頼性に影響します。チェックリストやレビューシートを活用し、誤字脱字・構成・表現・出典チェックまでを分担することで、属人的な判断を排除し、品質の底上げが可能です。
読者にとっての“読みやすさ”を担保する仕組みこそが、編集業務の本質であり、再現性の高いメディア運営の礎となります。
ステップ4:入稿・CMSチェック・公開
記事が完成しても、公開前の入稿作業では細かな確認が必要です。見出し構成、メタディスクリプション、装飾、画像Alt、内部リンクなど、SEOとユーザビリティに直結する要素が多いため、CMS公開前に一括チェックする体制を整えることが重要です。
特に外注原稿の場合、設定ミスや抜け漏れの温床になりやすく、細部の確認を怠ると検索流入や回遊率の低下につながります。チェック項目はあらかじめリスト化し、誰が見ても判断できる形でルール化しておくと安心です。
記事公開は『作業の終わり』ではなく『運用の始まり』であるという認識をチーム全体で共有し、改善フェーズへのスムーズな引き継ぎを行いましょう。
ステップ5:分析・改善・ナレッジ共有
公開した記事の価値を高めるには、アクセス解析と改善のサイクルを回すことが不可欠です。GoogleアナリティクスやSearch Consoleを活用して成果を定量的に確認し、改善点を洗い出すことで、次回以降の制作精度も向上します。
分析を行わないままだと、成功・失敗の要因が属人化し、再現性のない運用に陥りかねません。数値に基づいた振り返りを通じて、制作体制そのものの課題にも気づけます。
また、得られたナレッジをシートやツールで蓄積し、チーム内で共有する仕組みを持つことで、経験の差を問わず成果を再現できる体制が整います。『やりっぱなし』を防ぎ、継続可能な運用の基盤をつくりましょう。
品質を守るための編集チェック体制とは?
オウンドメディアの継続運用において「内容はあるが信頼性に欠ける」「記事ごとに印象が違う」といった課題は避けて通れません。属人化を防ぎ、メディア全体の信頼性を確保するには、編集工程の中に『品質を守る仕組み』を組み込むことが必要です。
ここでは、具体的な品質管理の3つのポイントを紹介します。
複数人の視点を取り入れ、記録と共有をルール化することで、誰が関わっても安定した品質を実現できます。
誤字脱字/構成/E-E-A-Tの多段階チェック
品質管理においては「何をチェックするか」を項目ごとに分解し、複数の視点で確認する仕組みが欠かせません。とくに、誤字脱字・論理構成・E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)といった観点は、1人の担当者だけで網羅するのは困難です。
ここで有効なのが『多段階チェック』の導入です。たとえば、初稿チェックでは構成と事実確認、中稿チェックでは読みやすさと表現の整合性、最終チェックでは装飾やトンマナを確認するなど、役割を分担します。
こうすることで、主観による見落としを減らし、安定した品質が担保されます。視点の分担こそが、精度の高い編集体制を支える土台になります。
トンマナ/ブランド表現の統一ルール
オウンドメディアは、記事単体ではなく『媒体全体』としての信頼感が求められます。そのためには、言葉の選び方や語尾のトーン、見出し語などを統一するガイドラインが必要です。
ライターや編集者が複数存在する場合、個々の表現の癖が読者にとって『ばらつき』として認識され、結果としてブランドの印象が弱まるリスクがあります。
トンマナ(トーン&マナー)のルールを明文化し、初稿作成時からすり合わせることで、チェック時の修正工数も大幅に削減できます。
誰が書いても『同じ印象』が伝わるコンテンツづくりは、属人性を脱却し、メディアとしての信頼性を積み上げていくための前提条件です。
レビューシート・チェックリストの運用方法
属人化を防ぎ、チーム全体で品質を担保するためには『記録に残る運用』が不可欠です。レビューシートやチェックリストを記事ごとに付け、どの工程で何を確認したかを記録する仕組みを整えましょう。
たとえば、事実確認済み・E-E-A-T対応済み・トンマナ統一確認済みなど、チェック項目を可視化することで、進行の抜け漏れを防げます。また、レビュー内容を蓄積していくことで、チーム内のナレッジとして活用でき、教育コストの削減にもつながります。
すべてを人の記憶に頼らず『記録される仕組み』で管理することが、属人性からの脱却と品質安定において極めて有効です。
社内外メンバーとの編集連携のコツ
編集業務は、社内メンバーだけでなく外注ライターやデザイナーとの連携が欠かせません。しかし、指示の曖昧さや認識のズレが原因で「思った仕上がりにならない」「修正対応が何度も発生する」といった問題が頻発しがちです。
こうした事態を防ぐためには『進行ルールの明文化』と『情報共有の仕組み化』が重要です。たとえば、Slackを使ってチャンネル単位で案件を管理し、Notionで記事ごとの構成案・進捗・チェックリストを一元化する事例もあります。
レビュー体制もルール化し「どの段階で誰が確認するか」を明示することで、やり取りの齟齬を減らせます。また、外注先にもプロジェクトの全体像を共有しておくことで、単なる『作業者』ではなく、目的共有された『チームの一員』として機能しやすくなります。
ツールとルールの両輪で支える体制こそが、連携トラブルを未然に防ぐ鍵です。
“編集を回す人”の負担を“仕組みで分散”させよう
編集業務は、慣れている人が何となく回す体制になりがちです。しかし、その状況が続くほど、属人化や品質のバラつき、進行トラブルが起きやすくなります。だからこそ今こそ、編集を回す人に集中している負担を、仕組みで分散させるタイミングです。
本記事で紹介したように、編集体制はフェーズ別に最小構成で設計でき、業務フローも5つのステップに分解して標準化が可能です。また、品質管理のルールや連携体制も明文化することで、誰でも再現可能な編集プロセスを構築できます。
まずは1つ『テンプレ化された型』を回し始めてみましょう。試行錯誤を重ねるうちに、改善点やボトルネックが見えてきます。属人的な運用から一歩抜け出し『仕組みで回る編集部』を目指すことが、メディア運用の安定と成果の最大化につながります。